所 在 地:高知県佐川町
用 途:物販、飲食、展示
敷地面積:9,940㎡
建築面積:2,113㎡
延床面積:1,853㎡
構 造:木造
設計協力:若竹まちづくり研究所+ワークステーション
構造設計:山田憲明構造設計事務所
設備設計:進設備設計事務所
施 工:岸之上工務店
撮 影:エスエス
プロポーザルにて選定された高知県佐川町の道の駅。日本の植物学の父といわれる牧野富太郎氏が生まれ育った「植物のまち」佐川町の基本構想に沿い、この道の駅が佐川町の産業振興ならびに広報・PRの拠点として、観光による経済波及効果と人の交流が町内全域へ及ぶゲートとして機能するように考え、次の三つの要素を柱とした建築を提案した。
牧野富太郎氏の生家がある上町の、歴史的な切妻屋根の街並みと山々の折り重なる美しい風景。敷地に隣接する法面に四季折々の花を植えた「まきのさんの花畑」を背景として切り取る、木造カステン構造の屋根。地質の町として有名な佐川町から派生して生まれた、おもてなしの意味を込めた「ごちそう佐川」という運営コンセプトに応え、まちの魅力を詰め込んだ「ご地層の帯」。その「ご地層の帯」が建物の中だけでなく敷地いっぱいに広がり、更に隣接する芝生広場や山の散策路へと伸びていき、佐川町の魅力をたっぷり体験できる道の駅を提案した。
ワークショップを通して町民と一緒に作ることができる余白を残すことで、建築が主役ではなく、周囲の自然や町の人々の活動と繋がり、少しずつ皆で作り・育てていく道の駅となる。
開駅以来、多くの来場者があり、今後も広場や背後の法面を花畑へと整備する予定であり、より佐川町らしい道となっていくと期待している。
風景に溶け込む日本らしい曲線の屋根
日本では直線と曲線は対立したものでなく、連続したものと考えられており、かつて大工は、細長い材を撓ませた「たわみ尺」を使って曲線を作った。その日本らしい曲線と直線の組合せで、背後の山並と調和する柔らかい屋根を構築する。南側は芝生広場を優しく囲い込む曲線の屋根とし、駐車場側に対しては広がりをもって来客者を迎え入れる。緩やかな屋根の曲面が映ろう空と共に表情を変え、牧野さんらしい道の駅の屋根として、佐川の山並の下にそっと伸びる。
構造計画
異なる三種類の木造の吊り構造を組み合わせ、運営、テナントのオペレーションの自由度を高めるため、可能なかぎりの無柱の大空間を実現した。敷地入口から切妻屋根の間を通して背景の法面が望めるように、世界初の木造吊り構造であるカステン構造を採用し、2つの屋根を撓ませて結んでいる。