Shimane, Japan — 2021

美郷町サテライトオフィス 第一期

Misato Satellite Office, Phase 1

島根県美郷町の旧町役場は、昭和3年の建築後に縫製工場へ転用され、増改築を重ねながら使われた末に、数十年にわたり放置されていた。トタン屋根は錆び、外壁は剥がれ落ち、庇は崩れ、大きな地震が来ればいつ倒壊してもおかしくないほど傷んでいた。江の川の穏やかな流れと四季の山々に抱かれた美しい町の中で、そこだけ時が止まったような穴が空いていた。事務所初の公共物件に着手した私たちが指針としたのは、「時を繋ぐ」「人を繋ぐ」「緩さ」という3つの姿勢である。

焼杉の外壁も木製の建具も、一度すべて取り外し、丁寧に補修して元の場所へ戻す。

傷みの著しい部材だけを見極め、既存に近い材でそっと継いでいく。

築100年の歪みや軋み、隙間を、この場所の個性として受け入れる緩さ。

二階の床の隙間から、木漏れ日のような光が一階へ落ちてくる。

焼杉の外壁や木製建具は一度すべて取り外し、再利用できる部材は一つひとつ丁寧に補修して元の位置へ戻した。著しく傷んだ部材だけは既存に近いものを選んで葺き替え、新旧の差異が目立たないようにしている。正面玄関脇の既存増築部分には誰でも使える交流サロンを設け、石見地方の伝統的な住居形式を手がかりに屋内の約半分を大きな土間として再構築し、コワーキングスペースとした。土間に面して4つのオフィスと打合せ室を繋ぐ屋内縁側を設け、施設利用者と町の人々の顔が見え合う場を目指している。

築100年の建物には、歪みや軋み、隙間がある。それを個性として受け入れる緩さこそ、この場所らしさだと考えた。地場の木材で手作りのOAフロアを組み、土間には町民の手を借りて石州瓦の破片を埋め込み、剥がした天井には再利用した焼杉をルーバー状に貼って100年間隠されていた構造材を現した。二階の床の隙間からは、木漏れ日のような光が一階へと落ちる。美しい美郷の自然と共に時を刻みながら新たな物語を紡いでいくこの建築は、美郷町との長きにわたる関係の出発点となった。

Project Information

所在地島根県美郷町
竣  工2021年6月
用  途サテライトオフィス
敷地面積911.4㎡
改修範囲325.2㎡
構  造木造(既存改修)
構造設計井上健一構造設計事務所
設備設計武井設備研究所
施  工彦田工務店
撮  影野津研一