Ibaraki, Japan — 2025

息栖にぎわいテラス

Ikisu Shrine Approach Facility

東国三社の一角・息栖神社の参道沿い、船溜まりに湧く忍潮井に面して建つ地域交流拠点施設。江戸期に茶屋町として賑わい、昭和初期まで文人墨客が宿泊した柏屋旅館があったこの地の記憶を継承し、参道と水辺、歴史と現代をつなぐ場として計画された。

息栖市内に残る国指定重要文化財・山本家住宅に見られる伝統的な木造片持ち構法「せがい造り」に着想を得て、茨城県産一般製材の短材を井桁状に4段組み合わせたレシプロカル構造によって、大断面材を用いることなく大きな跳ね出しを実現した。

東国三社の一角を担う息栖神社の参道沿い、常陸利根川から引き込まれた船溜まりの一角に湧く忍潮井(おしおい)に面して、この地域交流拠点施設は建つ。整備前の参道には店舗がなく、参拝を終えた人々はそのまま帰路についていた。本計画は、参拝者の滞在する場所を提供するとともに、神栖市の情報を発信する拠点として計画された。

住宅地に囲まれた敷地では、周辺住民へのプライバシーへの配慮から、参道側への大きな開口という選択を難しくした。その制約を逆手にとり、2階床を支えるレシプロカル構造を建物の内外に連続させ、参道の石畳風の床仕上げを基壇や室内に引き込み、室内では参道からつながる「裏参道」として施設を貫いている。施設の3方向に出入口を設け、参拝者も地域住民もどこからでも入り込める構えとしながら、参拝者や地域住民が自然に立ち寄れる開放性を確保し、閉じながらも地域に開かれた構成となる。

外観は、息栖神社に見られる茶・朱・鳥居の鼠色・銅板屋根・石畳風仕上げなど、神社の色彩と素材を纏う。強いランドマーク性よりも地域の日常に静かに溶け込むことを優先したこの建物は、歴史や風景、人々の営みを緩やかに接続し、そこに集う人々の活動そのものを主役にする器として機能している。

水辺へと張り出すテラスからは、船溜まりと常陸利根川の水景、そこに沈む夕日が一望できる。

Project Information

所在地茨城県神栖市
竣  工2025年6月
用  途観光案内所(飲食、物販、事務所)
敷地面積1,053 m²
建築面積551.13 m²
延床面積709.20 m²
構  造木造 地上2階
構造設計山田憲明構造設計事務所
設備設計ZO設計室
施  工平成建設
撮  影エスエス 中尾孝佑