Tokyo, Japan — 2020

池袋の共同住宅

Apartment Building in Ikebukuro

都心に建つ賃貸マンションの計画。プライバシーを守る、と言うと、建築はどうしても壁のように閉じていく。けれど本当に必要なのは、遮ることではなく、隔てながらもゆるやかに繋がる境界なのではないか——そう考えるところから、この計画は始まった。

障子や格子窓のように、透明でも不透明でもない境界。

5つの角度に振った縦桟が、見るたびに違う表情を見せる。

見方によって見えたり見えなかったりする、現象としての透明性。

手摺の木漏れ日と、育った木々の木漏れ日が重なり合う。

思い浮かべたのは、障子や格子窓といった、日本の建築が古くから育んできた装置である。透明でも不透明でもなく、光や風、気配だけをやわらかく通す膜のような存在。その現代的な翻訳として、5つの異なる角度に振った縦桟を組み合わせた手摺を、建物の周囲にめぐらせた。

この手摺は、見る角度や距離、そして光の強さによって、表情を変え続ける。歩道を歩く人にとっては、通り過ぎる一瞬ごとに透け方が変わる、呼吸するような壁面となる。室内からは、桟のあいだから漏れ入る光と、反射してにじむ光とが重なり合い、外の景色を粒子のように拡散させながら運んでくる。

そこにあるのは、ガラスのような物質的な透明性ではない。見る側の視線や条件によって、見えたり見えなかったりする——いわば現象としての透明性である。実体としては閉じていながら、知覚のうえではひらかれている。そのあわいに、この建築の境界はかたちづくられている。

セットバックによって生まれた足元の緑地帯には、木々を植えた。10年、20年という時間の中でそれらは育ち、枝を伸ばし、葉を茂らせ、やがて地面に木漏れ日を落とすようになるだろう。その木漏れ日は、手摺がつくる木漏れ日と重なり合い、内と外を隔てる境界を、さらにやわらかくにじませていく。

Project Information

所在地東京都豊島区
竣  工2020年10月
用  途共同住宅
敷地面積580.43㎡
建築面積383.83㎡
延床面積1,682.00㎡
構  造RC造
構造設計NCU一級建築士事務所
設備設計武井設備研究所
施  工池田建設
撮  影Graphy, Inc.