Okayama, Japan — 2022

蒜山そばの館

Hiruzen Soba Restaurant

蒜山三座を望む高原の道の駅で、長く地域の人々に愛されてきたそば館が火災で失われた。その再建は、単に建物を元通りにすることではなく、この土地が育んできた時間を引き継ぐ試みとなった。

鉄骨梁と垂木を丁寧に納めた蒜山の稜線に呼応する深い庇は、

雪の重みを静かに受け流しながら、軒下に立つ人の目線を山並みへと導く。

入口に掛かるのれんは、ひのきの木片を用いた草木染めによるもの。

地元の職人の手を経て、建築そのものが土地の素材と技術の集積となった。

積雪高さ1,400mmにも及ぶ多雪地域であることから、地域に伝わる「入母屋造り」を、在来軸組と地場の産業であるCLTを組み合わせたハイブリッド構造で現代的に架け直した。内部は、CLTの現しと不燃木を組み合わせた天井が、地元産木材ならではの質感と温もりをそのまま空間に伝え、そばを啜る客席から山の稜線が額縁のように切り取られる。

屋根も、庇も、のれんも、そのすべてがこの土地の気候と暮らしから逆算された結果としてある。客席の床にはタイルとフローリングを併用し、土間から続く土地の質感と、腰を落ち着けて過ごす時間の心地よさを一つの空間に共存させた。夏は蒜山高原の涼風を、冬は深い雪景色を、大きな庇の下から静かに眺めながらそばを味わう。焼失という喪失を経て蘇ったこの場所は、地域の記憶をつなぎ直す新たな器として、季節を問わず人々を迎え入れ続けている。

Project Information

受  賞 ウッドデザイン賞2023 国際博覧会担当大臣賞
所在地岡山県真庭市
竣  工2022年7月
用  途飲食店
敷地面積2,027.00㎡
建築面積298.68㎡
延床面積271.64㎡
構  造木造(在来+CLT)+ 一部鉄骨造
構造設計山田憲明構造設計事務所
設備設計ZO設計室
施  工森本組
撮  影エスエス秋田広樹