Gunma, Japan — 2020

あら町の通り土間

Alley in Aramachi

高崎駅西口から歩いて6分。24もの商店街が今も残るこのまちでは、その隙間を縫うように駐車場が虫食い状に広がり、かつて街を満たしていた人々の賑わいや、ふと足を止めて言葉を交わすような居場所が、少しずつ失われつつあった。

駐車場が虫食いのように広がる街に、

広場の原則を、日本の都市のスケールで問い直す。

1階を欠き取って生まれた「通り土間」。

パーゴラの下を、近隣の人々がふらりと通り抜ける。

参照したのは、19世紀オーストリアの都市計画家カミロ・ジッテが著書『広場の造形』に記した、優れた広場が備える五つの条件。ヨーロッパの街に見られるような大規模な広場を、そのまま日本の都市に置くことはできない。そこで、ジッテの原則を日本の都市のスケールに翻訳し、建物と広場を水平にも垂直にもまとわりつなげることで、小さくとも立体的な広場空間をつくることを目指した。

この店舗付き二世帯住宅は、その考えを一棟の建築に落とし込んだものである。1階にはオーナーが営むカフェ併設の写真スタジオ、2階にはオーナーとご両親の住居を納めている。北側には1階を店舗とするマンションの建設が計画されており、敷地はマンションの広場と南側の道路とに挟まれることになる。そこで建物1階の一部をあえて欠き取り、オープンなカフェを差し込んだ。内外にまたがるパーゴラ屋根を一枚かけることで、南の道路と北の広場をひとつながりの軒下でつなぐ。拡幅した路地はそのまま広場の一部として機能し、近隣の住民がふらりと通り抜けたり、立ち止まって言葉を交わしたりする——地域の「通り土間」のような場所になることを思い描いた。

2階の住空間は、マンションや隣地の家と向かい合う東・西・北面には小さな窓を穿つにとどめ、視線の抜ける南面だけを大きく開いた。プライバシーを守りながら、部屋の奥まで陽の光が届く、明るく開放的な住まいである。

通りと広場を一枚の屋根がつなぐこの場所が、街に開かれた小さな溜まり場として、住まい手だけでなく、道行く人々の暮らしにもそっと寄り添うことを願っている。

Project Information

所在地群馬県高崎市
竣  工2020年1月
用  途店舗併用住宅(カフェ・写真スタジオ + 住居)
敷地面積195.35㎡
建築面積79.23㎡
延床面積163.80㎡
構  造木造一部鉄骨
構造設計井上健一構造設計事務所
設備設計武井設備研究所
施  工安松託建
撮  影Graphy, Inc.