美郷町サテライトオフィス 第二期
ウッドデザイン賞 2022、日本空間デザイン賞2022サステナブル空間賞

用 途 :事務所+集会所
敷 地 :島根県邑智郡美郷町
構 造 :木造
改修範囲 :269㎡
敷地面積 :911.4㎡
竣 工 :2022年3月
構 造 :井上健一構造設計事務所
設 備 :武井設備研究所
写 真 :野津研一
施 工 :彦田工務店

計画地は島根県の中山間地域の人口5500人という小さな町にあり、町の脇を深緑色の雄大な江の川が流れ、山々に囲まれた四季の美しい場所にある。敷地は古い建物が連なる通りの一角にあり、隣には平安時代から続く寺が佇む。ここに昭和3年に建設された美郷町の旧役場が、増改築を重ね縫製工場として使用された後、数十年間放置されていた。これをサテライトオフィスへと改修することでI・Uターン者を呼び込む地方創生プロジェクトとして、使用されていなかった2階部分をオフィス機能の拡張・拡充を目的として2期工事を行った。

サテライトオフィスという機能上、小さな村に町外から大勢の人がやってくることになり、町の人々は不安を募らす。その不安を払拭するため、町内外の人々が溶け合い、町の新たな活力となるように、「つなぐ」ということを念頭に計画を進めた。正面玄関脇の既存増築部分を活用した交流サロンが町民と町外からやって来る利用者をつなぎ、室内の縁側が施設利用者同士をつなぐ。

2階も1階と同様に、建物北側に多くあった既存柱や壁を活用し、耐震要素となる筋交いや耐震壁を加え、北側にオフィス諸室を並べ、南側に誰でも自由に使える大きな多目的室を設ける構成とした。多目的室とオフィスに挟まれたエリアに4つのアルコーブを設置した。これらのアルコーブは、1階の縁側と同様にオフィス利用者と町民をしつなぐ役割を果たす。町民やオフィス利用者の打合せ室としての使用や、多目的室を使う町民の託児スペースとして利用するなど、活用を豊かにする様々なサポート機能を備える。オフィスやアルコーブの開口には、建物の特徴である既存アーチ窓を活用し、レイヤー状につなぐことで、どこにいてもホールの活動が見えるようになっている。アルコーブの外周壁は町のシンボルカラーでもある江の川の深緑色、アルコーブ内は美郷町の美しい四季を表す淡い色の塗装とし、美郷町らしい空間が浮かび上がらせた。

サテライトオフィスを起点に、新たに店舗が開店しており、持続可能な地域づくりの一助を担っている。