都心の賃貸マンションの計画。プライバシーを守るために壁のように建つのではない、柔らかい境界を作れないかと考えた。日本に古来からある、障子や格子窓などのように、透明でも不透明でもない内外を柔らかく繋ぐ境界を、5つの異なる角度に回転させた縦桟を組み合わせた手摺を設けることで提案した。光、風、視線、風景を程よく通し、歩道を歩く人と建物との距離や角度、光の強度によってその透明性が変化していく。室内からは、手摺の隙間から桟に反射した光と共に外の景色を拡散させる。物質的な透明性ではなく、見方により見えるものが見えたり、見えないものがあったりといった現象学的な虚の透明性による柔らかい境界面を生む。セットバックによって設けられた緑地帯の木々が10年、20年と経つにつれ育ち、緑生い茂り、木漏れ日を落とす。その木漏れ日が、手摺の木漏れ日と相俟って、より内と中の境界を和らげ、外へと広がる空間を作り出してくれるだろう。
用 途 :共同住宅
敷 地 :東京都豊島区
構 造 :RC造
建築面積 :383.83㎡
延床面積 :533.08㎡
敷地面積 :580.43㎡
竣 工 :2020年10月
設計協力 :K&T一級建築士事務所
構 造 :有限会社NCU一級建築士事務所
設 備 :株式会社武井設備研究所
施 工 :池田建設株式会社
撮 影 :Graphy,Inc.